目次
CMS構築とは
まず、「CMSを構築する」とは具体的にどのような状態を指すのか、単なるツール導入との違いを含めて解説します。
CMS構築の定義
CMS構築とは、単にソフトウェアをインストールすることではありません。
自社のコンテンツ運用フロー(承認プロセス、更新頻度、セキュリティ要件など)に合わせて、サーバー環境の整備、データベースの設計、管理画面のカスタマイズ、そしてフロントエンドの実装を行う一連のエンジニアリング工程を指します。
「誰が・いつ・どのように」情報を更新するかという運用設計に基づき、システムとして最適化された環境を作り上げることが「CMS構築」の本質です。
適切なCMS構築によって解決される3つの課題
自社の運用体制にフィットしたCMSを構築することで、以下の3つのメリットが得られます。
1. 運用コストの削減と内製化
都度の更新作業を制作会社へ依頼している場合、その修正コストは年間で大きな額になります。自社で更新可能なCMSを構築することで、ランニングコストを大幅に圧縮できます。
重要なのは「どの範囲まで自社でいじるか」を構築段階で定義し、専門知識がなくても運用可能なUIを設計することです。
2. 情報発信のリードタイム短縮
市場の変化に合わせて即座に情報を公開できるスピードは、現代のビジネスにおいて強力な競争力となります。適切に構築されたCMSがあれば、エンジニアの手を借りずに広報やマーケティング担当者が直接ページを生成・公開できるため、機会損失を最小限に抑えられます。
3. SEO内部対策の自動化と構造化
SEOに強いサイトを構築するためには、適切なタグ設定や内部リンク構造が不可欠です。CMS構築時に、title/descriptionの自動出力設定、パンくずリストの自動生成、構造化データの実装などをシステムに組み込むことで、担当者のスキルに依存せず、常にSEOに最適化された状態を維持できます。
CMS構築における5つの主要な手法
CMS構築には大きく分けて5つのアプローチがあります。それぞれの特徴と、どのようなプロジェクトに向いているかを解説します。
1. オープンソース型
ソースコードが無償公開されているCMSを利用して構築する手法です。
- 特徴: ライセンス費がかからず、技術情報やプラグインが豊富で拡張が容易。
- 向いているケース: コストを抑えたい中小規模サイト、オウンドメディア構築。
- 注意点: ソフトウェア自体の費用は0円ですが、セキュリティ対策やバージョン管理を自社(または委託先)で責任を持って行う必要があり、保守運用費がかさむ場合があります。
2. パッケージ型(オンプレミス含む)
ベンダーが開発した製品ライセンスを購入し、自社サーバー等に構築する手法です。
- 特徴: 承認フロー、版管理、会員管理など、企業利用(エンタープライズ)に必要な機能が標準搭載されています。ベンダー保証があるため信頼性が高いのが特徴です。
- 向いているケース: セキュリティ要件の厳しい中〜大規模企業のコーポレートサイト、イントラネット。
- 注意点: 初期のライセンス費用(数百万円〜)が高額になる傾向があります。また、独自機能の追加など大幅なカスタマイズを行う場合、特定のベンダーへの依存度(ベンダーロックイン)が高くなります。
3. クラウド型(ASP・SaaS一体型)
ベンダーが提供するクラウド上のCMSサービスを利用する手法です。
- 特徴: サーバー構築(インフラ構築)が不要で、契約後すぐに利用開始できます。セキュリティや保守管理もベンダー任せにできます。
- 向いているケース: 立ち上げスピード重視のLP、小規模なブランドサイト、標準機能で事足りるECサイト。
- 注意点: テンプレートベースであることが多く、デザインや機能の自由度、他システムとの連携に制約がある場合が多いです。
4. フルスクラッチ型
既存のCMS製品を使わず、ゼロから独自のシステムを開発する手法です。
- 特徴: 自社の業務フローや要件に合わせて100%独自の機能を実装可能です。基幹システムとの複雑な連携も自由自在に行えます。
- 向いているケース: 特殊な業務フローを持つ大規模ECサイト、独自のウェブサービスプラットフォーム。
- 注意点: 数千万円規模の投資が必要で、開発期間も半年〜1年以上とかかるケースが一般的です。
5. ヘッドレス構成(APIベース)

従来のCMSが「記事管理機能」と「ウェブ表示機能」をセットで提供するのに対し、「コンテンツ管理機能」だけを切り出してAPIで配信する最新の構築手法です。
- 特徴: 最大の特徴は「表示画面(フロントエンド)を自由に作れること」です。ReactやVue.jsなどの最新技術を用いて「高速なウェブサイト」を構築したり、ウェブサイトとスマホアプリの両方に同じ記事を一括配信(オムニチャネル化)したりすることが可能です。
- 向いているケース: 表示速度やUI/UXにこだわりたいサービスサイト、アプリ連携が必要なメディア、セキュリティを堅牢にしたいプロジェクト。
- 注意点: 「表示画面」を一からプログラミングする必要があるため、モダンなフロントエンド開発スキルを持つエンジニアの確保が必要です。
CMS構築の費用相場と見積もりの変動要因
CMS構築の費用は「ピンキリ」と言われますが、見積もり金額を大きく左右する要因は明確です。予算計画の参考にしてください。
構築費用を左右する3つの変動要素
- デザイン・UIの独自性
テンプレートを使用するか、デザイナーが作成した独自デザインをコーディングするかで費用は倍以上変わります。 - 機能開発(カスタマイズ)の範囲
標準機能のまま使うか、「独自の検索機能」「会員マイページ」「基幹システム連携」などを追加開発するかにより、エンジニアの工数が大きく変動します。 - データ移行(マイグレーション)の難易度
リニューアルの場合、旧サイトの数千ページ分の記事データを「新システムへどう移すか」がコストに直結します。プログラムでの自動移行は効率的ですが、新旧のデータ構造が異なると移行プログラムの開発費が高額になります。
予算計画で押さえておくべき費用の内訳
見積書をチェックする際は、以下の項目が含まれているか確認しましょう。
- イニシャルコスト(構築費)
- 要件定義・設計費
- デザイン制作費
- CMSライセンス費・サーバー構築費
- フロントエンド実装・カスタマイズ開発費
- データ移行費(※見落とされがちです)
- ランニングコスト(運用費)
- サーバー・ドメイン維持費
- CMSライセンス利用料(月額/年額)
- 保守メンテナンス費(セキュリティ対応・障害対応・CMSアップデート代行)
CMS構築を成功に導く4つの開発ステップ
CMS構築プロジェクトは、一般的に以下のフローで進行します。特に重要なのは、実際の開発に入る前の「要件定義」です。
ステップ1:要件定義とRFP作成
プロジェクトのゴールを明確にします。「誰が更新するのか(運用体制)」「必要な機能は何か(要件)」を洗い出し、RFP(提案依頼書)にまとめます。
この段階で、セキュリティレベルや対応デバイス(スマホ・アプリ等)、想定アクセス数などの非機能要件も定義しておくと、後のシステム選定がスムーズになります。
ステップ2:システム選定とベンダー選定
定義した要件に対し、最適なCMS構築手法(OSS、パッケージ、ヘッドレス等)を選定します。その上で、その手法に強みを持つ制作会社や開発ベンダーを選定します。
提案を受ける際は、見積金額だけでなく「保守体制」や「過去の類似案件の実績」を重視して評価してください。
ステップ3:設計・開発・実装
システム設計(DB設計、インフラ設計)と画面設計(UI/UX設計)を行います。
仕様が固まったら、デザイン作成、CMSのインストール、機能開発、コーディングへと進みます。リニューアルの場合は、この期間中に並行して「新旧記事データの移行テスト」を行うことが、スケジュール遅延を防ぐ鍵となります。
ステップ4:テスト検証と公開
構築されたシステムが要件通りに動作するか検証します。
- 機能テスト: フォームの動作、更新の反映、承認フローの確認
- 表示テスト: 各ブラウザ、スマホ実機での表示崩れ確認
- 負荷テスト: アクセス集中時にサーバーが落ちないかの確認(大規模サイトの場合)
また、運用担当者への操作レクチャーもこのフェーズで実施し、問題なければ本番公開となります。
構築後のトラブルを防ぐための重要ポイント
「作ったはいいが、使いにくい」「セキュリティが不安」といった失敗を避けるために、構築段階で意識すべき点です。
セキュリティ要件と保守責任の明確化
CMS(特にオープンソース型)は攻撃の対象になりやすいため、構築時にWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)の導入や、バックアップ体制を整えることが必須です。
また、公開後の「CMS本体のバージョンアップ」や「サーバーの保守」を自社で行うのか、ベンダーと保守契約を結ぶのか、責任分界点を必ず明確にしておきましょう。ここが曖昧だと、障害発生時に対応が遅れる原因となります。
現場が使えるUI/UXの設計
高機能なCMSでも、管理画面が複雑すぎて担当者が使いこなせなければ意味がありません。 構築の早い段階でプロトタイプ(試作画面)を触らせてもらい、「直感的に操作できるか」を確認してください。現場のリテラシーに合わせて不要なメニューを隠すなど、入力画面のカスタマイズこそが、CMS構築の満足度を左右します。
まとめ:自社の課題に合わせた最適なCMS構築を
CMS構築は、ウェブサイトの運用コスト削減やマーケティング加速を実現するための「基盤作り」です。
成功の鍵は、流行りのツールに飛びつくのではなく、自社の運用体制や予算、将来の拡張性に合わせて、「オープンソース」「パッケージ」「ヘッドレス」等の選択肢から最適な手法を選ぶことにあります。
まずは「どのような運用を実現したいか」という要件定義をしっかりと行い、信頼できるパートナーと共に、長期的に活用できるシステム構築を目指しましょう。