目次
- 多言語サイトの種類
- 導入するメリット
- 導入を慎重に検討すべきケース
- 目的の明確化
- 予算設定
- 翻訳・ローカライズ戦略
- スケジュール策定
- ターゲットの理解
- 1.サイト構造の定義
- 2.コンテンツの選定
- 3.文化にあわせたローカライズ
- 4.翻訳
- 5.テスト・品質保証
- Wordpress
- ヘッドレスCMS
- ウェブ解析ツール (Google Analyticsなど)
- Search Console (Google)
- 翻訳の質とコストのバランスについて
- 更新漏れや情報の伝達ミスについて
- 文化的なタブーと誤解について
- ケース1:ECサイト(海外販売強化型)
- ケース2:BtoB企業サイト(グローバル展開準備型)
- ケース3:情報サイト・メディア(グローバルな情報発信型)
- ケース4:SaaSプラットフォーム(グローバルユーザー獲得型)
- ケース5:教育機関サイト(国際的な学生募集型)
多言語サイトとは
導入を検討する前に、そもそも多言語サイトとはどのようなものを指すのか見ていきましょう。
多言語サイトとは、簡単にいうと、ひとつのウェブサイト上で複数の言語に対応したコンテンツを提供しているサイトのことを指します。
具体的には、同じドメインやサブドメイン内で、ユーザーが希望する言語を選択することで、サイト内のテキスト、画像に含まれるテキスト、動画の字幕、そして提供されるサービスや機能などが、その選択した言語で表示される仕組みを持ったサイトです。
こうしたサイトは、グローバルに事業を展開する企業や、多様な顧客層を持つ組織にとって、重要なコミュニケーションツールとしての役割を持っています。
多言語サイトの種類
多言語サイトにはいくつかの種類があります。主に以下のものが挙げられます。
- 完全多言語サイト: サイトのすべてのコンテンツが複数の言語で提供されるサイト
- 部分多言語サイト: サイトの一部のコンテンツのみが複数の言語で提供されるサイト
- 言語選択型サイト: ユーザーが自分で言語を選択できるサイト
- 自動翻訳サイト: 機械翻訳によってコンテンツが翻訳されるサイト
どの種類の多言語サイトを選択するかは、ターゲットユーザー、予算、コンテンツの量などによって慎重に検討すべき事項になります。
導入するメリット
一般的に導入のメリットとしてあげられるのは、以下の3点です。
多言語サイトは、グローバルに事業を展開する企業や、多様な顧客層を持つ組織にとって、重要なコミュニケーションツールとしての役割を果たします。
1.潜在顧客へのリーチ拡大
言語の壁を取り除くことで、これまでリーチできなかった世界中のユーザーに情報を届けることができるようになり、新たな顧客層を獲得するチャンスが生まれます。
特に、海外市場への進出を考えている企業にとっては、多言語対応は不可欠と言えるでしょう。
2.グローバルブランドイメージの構築
多言語対応は、企業のグローバルなブランドイメージを構築する上で欠かせない要素です。
複数の言語で情報発信を行うことは、企業や団体のグローバルでの存在感を高め、ブランドイメージの構築に貢献します。
また、「世界中の顧客を大切にしている」というメッセージを伝えることができ、競合他社との差別化にも繋がります。
3.顧客満足度の向上
顧客は基本的に、自らの言語で情報を受け取ることを好む傾向にあります。
例えば、同じような商品があった場合、母国語のサイトが用意されてる場合とそうでない場合では、ほとんどの人が母国語のサイトを持っている商品を選びます。
多言語サイトは、顧客に対して、より自分に寄り添った体験を提供し、顧客満足度を向上させることができます。
特に、購入や問い合わせといったアクションを促したい場合に有効です。
導入を慎重に検討すべきケース
もちろん、メリットが大きいからといって、どんなサイトも多言語化すればいいというわけではありません。
場合によっては想定していたような成果が得られないこともあります。
ご自身のウェブサイトやサービスにあわせて検討してみましょう。
明確なターゲットが存在しない場合
翻訳、ローカライズ、サイトのメンテナンスなど、多言語サイトの運営には一定の予算が必要です。
予算が限られている場合、十分な品質を確保することが難しくなる場合があります。
予算を抑えるために機械翻訳を多用したり、翻訳の専門家を雇わなかったりすると、不自然な表現や誤訳が出てしまい、結果的に企業の信頼性を損なう可能性があります。
コンテンツの性質が適さない場合
ウェブサイトのコンテンツによっては、多言語対応が適さない場合があります。
たとえば、特定の地域に特化した情報や、文化的な背景に深く根ざしたコンテンツは、多言語化によってその価値が損なわれることも考えられます。
制作前にやっておくこと
目的の明確化
グローバルな顧客を確保することを目的としたとして、ただ闇雲に進めていけばいいというわけではありません。制作する前に、もう少しだけ目的を具体化していくことが重要になります。
たとえば「海外市場の新規参入」を目的としたとして、具体的にどういうことをゴールとするのか。
まずはサービスの認知を目的とするのか、それとも問い合わせや購入数アップも視野にいれるのか、月毎の訪問者数、問い合わせ数、購入数など、達成すべき目標を具体化します。
これによって、サイト全体の設計からコンテンツ制作に至るまでの方向性が定まり、多言語サイト構築の効果的な指針が決まります。
予算設定
翻訳費用、システム開発費用、運用費用など、必要な予算を見積もります。
どのコンテンツを多言語化するのか、優先順位をつけます。重要なページやアクセス数の多いページから始めるのが一般的です。
翻訳・ローカライズ戦略
予算が決まったら、どのように翻訳していくかを決めていきます。機械翻訳、プロ翻訳者、ネイティブチェックの有無などを検討します。
最近では、ウェブサイトやメディアの多言語化を一括で行うサービスもあります。予算とスケジュールに応じて臨機応変に対応できるよう、事前にさまざまな手法を調査しておきましょう。
スケジュール策定
予算や翻訳戦略をもとにスケジュールを策定します。
マイルストーンを設定し、担当者を明確にするなど、計画的な進行管理が重要です。また、遅延や問題発生時の対応策も検討しておくことが重要です。
担当者が海外在住の場合は、時差や休日の違いなども考慮します。
ターゲットの理解
最後にターゲットの理解です。
多言語サイトの成功は、ターゲットとなるユーザーを深く理解することにかかっています。ターゲットの言語、文化、ニーズ、期待などを把握し、それらに合わせたサイト設計とコンテンツ制作を行うことが重要です。
商品を販売するサイトであれば、日本で売れるものとまったく逆のものが評判を呼ぶかもしれません。
日本語の場合と同様、年齢層や性別といった属性のほか、文化、ニーズなどを把握し、それらに合わせたサイト設計とコンテンツ制作を行うことが成功に繋がります。
特に、タブーとされる表現や、色・かたちなどの文化的意味合いの違いについてはあらかじめ調査を欠かさないようにしましょう。
制作における5つのステップ
1.サイト構造の定義
多言語サイトのサイト構造は、ユーザーエクスペリエンスに大きく影響します。
言語ごとにディレクトリを分ける、サブドメインを使用する、などの方法がありますが、SEO(検索エンジン最適化)やユーザーの利便性、サイトの目的を考慮して最適な構造を選択する必要があります。
主な構造としては、以下の3つの方法が挙げられます。
言語別ディレクトリ
サイトのURL内に言語ごとのディレクトリを作成する方法(例: example.com/en/, example.com/fr/)
設定が比較的容易であり、SEOにおいても、言語ごとにコンテンツが整理されていると認識されやすいという利点があります。
また、サイトの管理がしやすいという特徴もあります。
サブドメイン
言語ごとに異なるサブドメインを使用する方法(例: en.example.com,fr.example.com)
各言語サイトを独立したサイトとして扱うことができ、大規模なサイトや、言語ごとに大きく異なるコンテンツを提供する場合に適しています。
ただし、SEOにおいては、検索エンジンに別々のサイトとして認識される可能性があるため、適切な設定が必要となります。
国別ドメイン (ccTLD)
言語ごとに異なる国別コードトップレベルドメインを使用する方法(例: example.co.uk, example.de)
ccTLD(Country Code Top Level Domain、国別コードトップレベルドメイン)とは、国や地域ごとに割り当てられているトップレベルドメインのことです。
特定の国を強く意識したサイト構築に適しており、SEOにおいて、検索エンジンに特定の国向けのサイトであることを認識させやすいという利点があります。しかし、設定や管理が最も複雑になる傾向があります。
その管理主体や運用ポリシーは国や地域によって大きく異なります。
一部のccTLDでは、ドメイン登録者や管理者がその国・地域に物理的な拠点を置く必要があるなど、ローカルプレゼンスが求められる場合があります。これにより、グローバルな企業や個人が当該ccTLDを取得・管理する際の障壁となります。
2.コンテンツの選定
多言語サイトで提供するコンテンツを選定する際には、ターゲットユーザーにとって価値のある情報を選ぶことが重要です。
また、文化的な違いや現地のニーズに合わせてコンテンツを調整することも考慮する必要があります。
具体的な選定プロセス
- ターゲット市場とビジネス目標を明確にする。
- 既存の日本語コンテンツを棚卸しする。
- 上記の判断材料に基づいて、翻訳候補となるコンテンツをリストアップする。
- リストアップしたコンテンツに優先順位をつける(例:高・中・低)。
- 予算とリソースを考慮しながら、翻訳するコンテンツを最終決定する。
まずは、最も重要な情報、問い合わせが多い情報、コンバージョンに繋がりやすい情報から翻訳を開始し、効果を見ながら徐々に他のコンテンツへと拡大していくアプローチが一般的です
3.文化にあわせたローカライズ
ローカライズとは、ウェブサイトを特定の地域や言語のユーザーに合わせて最適化するプロセスです。これには、言語だけでなく、日付や通貨の表記、デザイン、画像、さらには文化的ニュアンスの調整も含まれます。
たとえば、色の使い方。色は文化によって異なる意味を持つため、ターゲットごとに適切な色を選ぶ必要があります。
また、文化によっては情報の提示方法やサイトの構造に対する好みがあります。文字が右から左へと記述される言語の場合は、レイアウトの調整が必要になります。
避けるべき話題、表現、行動様式を把握することが重要です。
4.翻訳
翻訳は、ウェブサイトのテキストコンテンツを別の言語に変換するプロセスです。高品質な翻訳は、正確性だけでなく、自然さや読みやすさも兼ね備えている必要があります。
機械翻訳
機械翻訳は、コンピューターソフトウェアを使用してテキストを自動的に翻訳する技術です。
短時間で大量のテキストを翻訳できる利点があります。
昨今では実用に耐えうるほど精密度が上がっていますが、特殊な内容を扱うケースでは、文脈の理解やニュアンスの表現が難しいことがあります。
専門家による翻訳
専門家による翻訳は、言語の専門家が手作業で翻訳を行う方法です。
機械翻訳に比べて高品質な翻訳が期待できますが、時間とコストがかかる場合があります。
複合的な翻訳
最近ではスクリプトを1行追加することにより、ウェブサイト全体を自動で機械翻訳し、さらに人間の手で編集することのできる複合的なサービスも増えてきました。
CMSのプラグイン型や、APPなどさまざまな手法に対応しているサービスもあるので、ウェブサイトの構築形態にふさわしいものを選ぶのもよいでしょう。
いずれにしても、翻訳の一貫性を保つための「翻訳スタイルガイド」を用意することを考慮にいれることをおすすめします。
5.テスト・品質保証
多言語サイトを公開する前に、すべての言語でサイトが正しく機能し、表示されることを確認するためのテストと品質保証プロセスが不可欠です。
これには、リンクのチェック、レイアウトの確認、翻訳の正確性の検証などが含まれます。
まず、サイトの基本的な機能テストとして、リンクの有効性、ページのレイアウトの一貫性、フォームの動作確認などを行います。
多言語サイトでは、言語を切り替えてもこれらの機能が正常に動作することが重要です。
特に、言語によってテキストの長さが大きく異なる場合、レイアウトの崩れが発生しやすいため、注意深く確認する必要があります。
特に注意したいのは以下の2点です。
翻訳スタイルガイドにそっているか
翻訳スタイルガイドは、翻訳の一貫性を保つための重要なツールです。テストでは、翻訳がこのスタイルガイドに準拠しているかを確認します。
具体的には、用語の統一性、トーン&マナーの一貫性、特定の表現の使用などが検証されます。スタイルガイドに違反する翻訳が見つかった場合は、修正を行い、必要に応じて翻訳者へのフィードバックを実施します。
表示速度に問題はないか
多言語サイトは、コンテンツ量が増加しやすく、表示速度が遅くなる傾向があります。
表示速度は、ユーザーエクスペリエンスだけでなく、SEOにも影響を与える重要な要素です。
テストプロセスにおいては、各言語のページが表示される速度を測定し、許容範囲内に収まっているかを確認します。
必要に応じて、画像の最適化、キャッシュの活用、CDNの導入などの対策を検討します。
表示速度の確認には、Google PageSpeed Insightsなどのツールを活用します。
URLを入力するだけで、ページの読み込み速度や改善点が数値で評価されます。
PageSpeed Insightsのスコアは、0から100までの数値で評価され、一般的には以下のようになります。
- 90点以上: 良好です。ユーザーエクスペリエンスやSEOの観点で最適な状態である可能性が高いです。ただし実際のユーザーエクスペリエンスに問題があっても高スコアになる場合があるため注意が必要です。。
- 50〜89点: 改善の余地があります。いくつかの最適化を行うことで、表示速度とユーザーエクスペリエンスを向上させることができます。
- 0〜49点: 品質に問題があります。表示速度が遅く、ユーザーエクスペリエンスやSEOに悪影響を与えている可能性が高いです。
CMSを活用した持続的な運用方法
CMSは、多言語サイトのコンテンツ管理を効率化するための強力なツールです。適切なCMSを選択し、多言語対応の機能を活用することで、運用コストを削減し、作業効率を向上させることができます。
運用に適したCMSを選ぶことは、効率的なコンテンツ管理とサイトの成長に大きく影響します。

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Wordpress
Wordpressは、自体はオープンソースのソフトウェアであり無料で利用できるのが大きなメリットです。
世界中で広く利用されているCMSのため、多言語対応のプラグインが豊富に提供されています。
利用者の多さからドキュメントのリソースも豊富で、比較的簡単に多言語サイトを構築できますが、サイト規模が大きくなると管理が煩雑になる場合があります。
手始めに小規模に運営を行うケースにおいては、検討してみてもよいでしょう。
ヘッドレスCMS
ヘッドレスCMSは、コンテンツの管理と表示を分離するアーキテクチャを持つCMSです。フロントエンドの開発自由度が高く、様々なデバイスやチャネルに対応しやすいという特徴があります。
多言語サイトの運用においても、柔軟性と拡張性に優れています。コンテンツと表示が分離していることにより、言語ごとに異なるデザインやUIの実装を容易にします。
バックエンドで一元管理された多言語コンテンツは、APIを通じて各言語のフロントエンドに配信されます。これにより、デザイン変更が他言語サイトに影響せず、柔軟な対応を実現するというわけです。

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成長を意識した効果測定
多言語サイトでも、基本的な効果測定の指標は日本語サイトと同様ですが、特に以下の指標が重要になります。
- 言語別アクセス状況: どの言語のサイトが多く閲覧されているかを把握します。
- 地域別アクセス状況: どの国や地域からのアクセスが多いかを確認します。
- 言語切り替えの利用状況: サイト訪問者が言語切り替え機能をどの程度利用しているかを分析します。また、どの言語からどの言語への切り替えが多いかも把握します。
- 特定言語コンテンツの成果: 各言語で作成したコンテンツについて、アクセス数、エンゲージメント率(例:ページ滞在時間、離脱率)、コンバージョン率などを評価します。
- 翻訳品質に関するフィードバック: ユーザーからの翻訳に関する評価や問い合わせを収集し、分析します。
- hreflangタグの実装状況と効果: hreflangタグが正しく設定されているかを確認し、検索エンジンからの流入に悪影響がないかを監視します。Google Search Consoleなどを活用します。
- 多言語SEOの成果: 各言語のキーワードにおける検索順位の変化や、検索エンジンからの流入数を測定します。
ウェブ解析ツール (Google Analyticsなど)
- セグメント設定: 言語別、地域別のセグメントを作成し、各指標を比較分析します。
- カスタムディメンション: 言語設定などをカスタムディメンションとして設定し、より詳細な分析を可能にします。
- 目標設定: 各言語サイトにおけるコンバージョン目標を設定し、達成状況を追跡します。
- イベントトラッキング: 言語切り替えボタンのクリック数などをイベントとして計測します。
Search Console (Google)
Search Consoleの活用は、サイトのパフォーマンスを把握し、改善するための重要な手段です。
- カバレッジレポートでインデックス状況と言語ごとのエラーを確認する。サイトマップレポートで言語ごとのサイトマップを送信・監視する。
- URL検査ツールで個々のURLのインデックス状況やhreflang実装を確認する。
- パフォーマンスレポートで言語ごとの検索パフォーマンスを分析する。
- モバイルフレンドリーテストで各言語ページのモバイル対応状況を確認する。
- リンクレポートで被リンク状況を言語ごとに分析する。
フィルタ機能や比較機能を活用して、言語ごとのデータを比較分析をします。
定期的に各レポートを確認し、問題点を早期に発見して対応することが、多言語サイトのパフォーマンス維持・向上につながります。
よくある課題と解決方法
翻訳の質とコストのバランスについて
多言語サイトにおける翻訳では、翻訳の質とそれに伴うコストのバランスを取ることが大きな課題となります。
- 高品質翻訳のコスト高: 専門の翻訳家による翻訳は、正確性や自然な表現が期待できる反面、費用が高額になりがちです。特に専門分野やクリエイティブなコンテンツでは、その傾向が顕著です。
- 機械翻訳の品質リスク: AIを活用した機械翻訳は、低コストで大量の翻訳が可能ですが、文脈の理解不足やニュアンスのずれ、不自然な表現が生じるリスクがあります。ブランドイメージを損なう可能性も否定できません。
- 目的と品質のミスマッチ: コンテンツの重要度や目的に対して、適切な品質の翻訳を選択できない場合があります。低品質な翻訳が重要な情報を損なったり、高品質な翻訳が不要な箇所にコストをかけすぎたりする可能性があります。
解決方法
翻訳の質とコストのバランスを取るには、まずどの言語で何を伝えたいかを明確にし、コンテンツの重要度に応じて必要な品質レベルを設定します。
重要なコンテンツは高品質翻訳、情報提供が主なら機械翻訳+ネイティブチェックを検討します。翻訳会社は実績や料金を比較し、トライアルで品質を確認。機械翻訳導入時はポストエディット体制(機械翻訳の結果を人間によって修正する手法)を整えます。
完璧な品質だけでなく費用対効果を意識し、公開後のユーザーフィードバックで改善を図ることで、最適なバランスを見つけ、効果的なグローバルコミュニケーションを実現できます。
更新漏れや情報の伝達ミスについて
課題
多言語サイトでは、複数言語のコンテンツを同時に管理・更新する必要があるため、情報の更新漏れや言語間での伝達ミスが発生しやすいという課題があります。
これは、異なる担当者が各言語のコンテンツを管理する場合や、翻訳・公開のプロセスが煩雑な場合に特に顕著になります。結果として、一部の言語のサイトだけ情報が古くなっていたり、重要な情報が特定の言語でしか伝わっていなかったりする事態を招き、ユーザーの混乱や不信感に繋がる可能性があります。
人為的なミスを完全に防ぐことは難しく、多言語サイト特有の複雑さがこの課題をさらに深刻化させます。
解決方法
多言語サイトにおける更新漏れや情報の伝達ミスを防ぐためには、まず言語ごとの担当者を明確にし、責任の所在をはっきりさせることが重要です。
その上で、コンテンツ作成から承認、公開に至るまでの運用ルールを明確に定め、関係者間で共有・遵守する体制を構築します。
また、CMS(コンテンツ管理システム)の機能を積極的に活用することが有効です。
多くのCMSには、記事の作成、翻訳、承認、公開といったワークフローを言語ごとに設定できる機能や、公開前のチェック機能を備えたプラグインなどが存在します。
これらの機能を活用することで、人為的なミスを減らし、常に最新かつ正確な情報を多言語で発信できる仕組み作りが可能になります。例えば、翻訳完了後の承認プロセスを必須としたり、公開前に各言語のプレビューを確認するステップを設けたりすることで、情報伝達のミスを防ぐことができます。
文化的なタブーと誤解について
課題
多言語サイト運営において、文化的なタブーや誤解は、ユーザーからの反感やブランドイメージの毀損に繋がりかねない重大な課題です。色、数字、宗教的な象徴など、一見何気ない要素が文化圏によって全く異なる意味合いを持つことがあり、不用意な使用は意図せぬ反発を招く可能性があります。
また、言葉の選び方一つをとっても、ある文化圏では許容される表現が、別の文化圏では侮辱と受け取られることもあります。これらの文化的な差異に対する認識不足は、グローバルなビジネス展開における大きな障壁となり、せっかく多言語サイトを構築しても、ターゲットユーザーに適切にメッセージが伝わらず、期待される効果を得られない原因となります。
文化的な感受性の欠如は、単なるコミュニケーションの失敗に留まらず、ビジネスチャンスの損失や信頼失墜に繋がる深刻な問題になり得ます。
解決方法
多言語サイトにおける文化的なタブーと誤解を防ぐためには、ターゲット地域の文化や習慣に関する深い理解が不可欠です。そのためには、初期段階からローカライズの専門家との連携を強化することが重要となります。
- 翻訳・ローカライズ専門エージェントの利用: 多言語対応に特化した人材紹介・派遣会社です。品質の高い翻訳者、校正者、ローカライズエンジニア、プロジェクトマネージャーなどを探せます。費用は高めになる傾向がありますが、専門知識や実績のある人材にアクセスしやすいです。
- クラウドソーシングプラットフォームの利用: Upwork、Freelancer、Lancersなどのプラットフォームでは、世界中の翻訳者やネイティブスピーカーに比較的安価に依頼できます。ただし、品質にはばらつきがあるため、実績やレビューを慎重に確認する必要があります。トライアル翻訳を依頼するのも有効です。
さらに、コンテンツ公開後も、現地のユーザーからのフィードバックを積極的に収集し、必要に応じて修正や改善を行うことで、文化的な誤解のリスクを最小限に抑える努力が求められます。
多言語サイトの導入事例
ここでは、導入事例として多言語サイトが有用なシチュエーションをまとめ、想定される成果と施策をまとめました。
検討中のウェブサイトと似たケースを参考としてお役立てください。
ケース1:ECサイト(海外販売強化型)
業種: ファッション・アパレル
目的: ヨーロッパとアジアの新規顧客獲得、海外売上比率の向上
対応言語: 英語、フランス語、ドイツ語、中国語(簡体字)、韓国語
想定される結果:
- 対応言語圏からのアクセス数が大幅に増加
- 海外からの購入件数増加
- 特定の国でのブランド認知度が向上
- 顧客からの問い合わせ対応言語が増加
主な施策:
- URL構造: 各言語にサブディレクトリ(/en/, /fr/ など)を採用し、SEO効果を最大化。
- 翻訳・ローカライズ: 主要な商品ページ、カテゴリページ、決済フローはプロ翻訳者が担当。商品説明の一部は機械翻訳を活用し、ネイティブスタッフがチェック。
- 多言語SEO: 各言語のキーワード調査を実施し、メタディスクリプションやalt属性を最適化。hreflang属性を実装。
- 運用: 各言語のコンテンツ更新は、翻訳管理ツールを導入し、ワークフローを効率化。顧客からの問い合わせは、各言語のカスタマーサポートチームが対応。
ケース2:BtoB企業サイト(グローバル展開準備型)
業種: 精密機器メーカー
目的: 海外の潜在的な取引先への情報提供、パートナーシップの機会創出
対応言語: 英語、中国語(簡体字)、スペイン語
想定される成果:
- 海外企業からの資料請求や問い合わせが増加
- 海外展示会での商談機会が増加
- ウェブサイトを通じた技術的な情報提供が円滑化
- 海外の業界メディアからの注目度向上
主な施策:
URL構造: グローバルサイト全体は英語を基本とし、特定の国向けの技術情報や事例紹介はサブディレクトリで展開。
翻訳・ローカライズ: 製品スペックシート、技術資料、導入事例は専門性の高いプロ翻訳者に依頼。企業概要やニュースリリースは社内スタッフが翻訳。
CMS: 多言語対応プラグインを導入した既存のCMS(例:WordPress + WPML)を活用し、コンテンツ管理の負荷を軽減。
運用: 海外からの問い合わせは、英語対応可能な営業担当者が一次対応。必要に応じて各言語の担当者へ連携。
ケース3:情報サイト・メディア(グローバルな情報発信型)
業種: 旅行・観光情報メディア
目的: 世界中の旅行者への情報提供、地域への誘致
対応言語: 英語、日本語、タイ語、ベトナム語
想定される成果:
- 多様な国籍のユーザーからのアクセスが増加
- 特定の観光地の情報へのアクセスが集中
- SNSでの多言語でのシェアが増加
- 広告収益の多様化
主な施策:
- URL構造: 各言語にサブドメイン(en.example.com, th.example.com など)を採用し、言語ごとの独立性を高める。
- 翻訳・ローカライズ: 旅行ガイド記事は、現地のライターや翻訳者に依頼し、文化的なニュアンスも考慮したローカライズを実施。ユーザー投稿コンテンツは、必要に応じて機械翻訳を活用。
- 多言語SEO: 各言語の検索トレンドを分析し、コンテンツを最適化。地域ターゲティング設定を実施。
- 運用: 多言語に対応したSNSアカウントを開設し、各言語のユーザーに合わせた情報発信を実施。
ケース4:SaaSプラットフォーム(グローバルユーザー獲得型)
業種: クラウド型業務支援ツール
目的: 世界中の企業へのサービス提供、グローバル市場でのシェア拡大
対応言語: 英語、ポルトガル語、インドネシア語
想定される成果:
- トライアル登録ユーザーの国籍が多様化
- 中小企業だけでなく、海外の大手企業からの問い合わせも発生
- ユーザーコミュニティが多言語化
- 海外のレビューサイトでの評価が向上
主な施策:
- URL構造: パラメータ方式(example.com?lang=en など)を採用し、技術的な実装コストを抑える。
- 翻訳・ローカライズ: UI、ヘルプドキュメント、マーケティングコンテンツは、専門の翻訳会社に依頼。用語集を作成し、翻訳の品質と一貫性を確保。
- 技術: 言語ファイル(JSON、POなど)でコンテンツを管理し、翻訳会社との連携を容易に。
- 運用: 多言語対応のカスタマーサポート体制を構築。FAQやヘルプセンターも多言語化。
ケース5:教育機関サイト(国際的な学生募集型)
業種: 大学・専門学校
目的: 海外からの留学生の募集、国際的な教育機関としての認知度向上
対応言語: 英語、中国語(簡体字)、ベトナム語
想定される成果:
- 海外からの入学希望者の問い合わせが増加
- ウェブサイトを通じた学校情報の提供が充実
- 海外の教育関連機関との連携が進む
- 国際的なランキングでの評価が向上
想定される成果:
URL構造: 各言語にサブディレクトリを採用し、SEO効果とユーザーの分かりやすさを両立。
翻訳・ローカライズ: 学校概要、学部・学科紹介、入学案内は、教育分野に強い翻訳者に依頼。現地の文化や教育制度に合わせた表現にローカライズ。
コンテンツ: 動画コンテンツに多言語字幕を追加。海外の学生向けにオンライン説明会を実施。
運用: 各言語のソーシャルメディアアカウントを運用し、ターゲット国の学生に合わせた情報発信。
まとめ
グローバル化が加速する現代において、多言語サイトはビジネスの可能性を大きく広げる施策のひとつです。
もちろん、その必要性は事業の展開やターゲットとする市場によって異なりますが、世界中の多様なユーザーに情報を届け、新たな顧客を獲得する上で、その重要性は今後ますます高まるでしょう。
しかし、多言語サイトはただ作れば良いというものではなく、公開後の継続的な運用こそが成否を分けます。タイムリーな情報更新、各言語に最適化されたコンテンツの提供、そしてユーザー体験の向上への取り組みが不可欠です。
そのため、多言語サイトの構築段階から、その後の運用を見据えたシステム構築が重要になります。
多言語対応のCMS(コンテンツ管理システム)を導入することで、煩雑になりがちな複数言語のコンテンツ管理、翻訳ワークフロー、更新作業などを効率的に行うことができ、運用負荷を軽減し、質の高い情報発信を継続するための基盤となります。
多言語サイトの構築と運用は挑戦ではありますが、グローバルな舞台でビジネスを展開し、新たな可能性を切り開くための第一歩です。