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2025-05-28

Vercelホスティング入門|主要機能と他サービスとの違いを比較

Vercelホスティング入門|主要機能と他サービスとの違いを比較
近年、フロントエンド開発の領域において、Vercelはその簡単なデプロイ機能と開発者中心の設計思想により、注目を集めています。 しかしながら、Vercelを選択肢として検討する一方で、以下のような悩みをお持ちになった方もいるのではないでしょうか。 ・Vercelって、そもそも何? ・導入のメリットや使いどころが分からない ・他の類似サービスとの違いがわからない 本記事では、Vercelの主要な特長から、具体的な利用方法、他のホスティングサービスとの比較に至るまで、詳細に解説いたします。

Vercelとは

Vercelは、静的サイトおよびJamstackサイト、ならびにサーバーレス関数をホスティングするためのプラットフォームです。開発者がコードをGitリポジトリにプッシュするだけで、ビルド、デプロイ、ホスティングが自動的に行われるシームレスなワークフローを実現します。

また、高機能なCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を統合しており、世界中のユーザーに対して高速なコンテンツ配信を可能にします。

Vercelの特徴

Vercelが多くの開発者に支持される理由は、その多岐にわたる先進的な機能群にあります。以下に、Vercelの主要な特徴を挙げ、それぞれについて解説します。

Next.jsとの高い親和性

Vercelは、人気のあるReactフレームワークであるNext.jsの開発元によって提供されているプラットフォームであり、Next.jsとの連携は他のどのホスティングサービスよりも緊密かつ最適化されています。

Next.jsで開発されたアプリケーションをVercelにデプロイする際には、特別な設定をほとんど行うことなく、SSR(サーバーサイドレンダリング)、SSG(スタティックサイトジェネレーション)、ISR(インクリメンタルスタティックリジェネレーション)、APIルートといったNext.jsの強力な機能を最大限に活用できます。

ビルドプロセスやキャッシュ戦略もNext.jsの特性を理解した上で最適化されており、開発者はインフラストラクチャの管理に煩わされることなく、アプリケーション開発に集中できます。

CI/CD統合による自動デプロイ

Vercelは、GitHub、GitLab、Bitbucketといった主要なGitプロバイダーとの連携を標準でサポートしており、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを容易に構築できます。リポジトリの特定のブランチ(例: mainブランチ)へのプッシュやマージをトリガーとして、自動的にビルドとデプロイが実行されます。

これにより、開発プロセスが大幅に効率化され、ヒューマンエラーのリスクも低減されます。デプロイメントの履歴はVercelのダッシュボードで一元管理され、必要に応じて過去のバージョンへのロールバックも容易に行えます。

グローバルCDNによるパフォーマンス

Vercelの強力な機能の一つに、プレビューデプロイがあります。開発者が新しい機能や修正をGitリポジトリのブランチにプッシュすると、Vercelはそのブランチ専用の一意なURLを持つプレビュー環境を自動的に生成します。

これにより、本番環境にマージする前に、実際の動作を確認したり、チームメンバーや関係者と変更点を共有したりすることが容易になります。各プレビューデプロイは独立しており、本番環境に影響を与えることなく、安全にテストやレビューを行うことができます。

サーバーレス関数

Vercelは、サーバーレス関数を簡単にデプロイし、実行するための環境を提供します。Next.jsのAPIルートを利用する場合、pages/apiディレクトリ内に作成されたファイルが自動的にサーバーレス関数としてデプロイされます。

これにより、バックエンドのロジックやAPIエンドポイントをフロントエンドのコードと同じリポジトリで管理し、シームレスに連携させることが可能です。サーバーレス関数は、リクエストに応じて自動的にスケーリングするため、トラフィックの増減に柔軟に対応できます。

また、Node.jsに加えて、Go、Python、Rubyといった他の言語もサポートしています。ただし、Node.js以外の言語サポートにはプレビュー段階のものが含まれており、これらの機能を利用する際は、Vercelのドキュメントで最新のサポート状況や利用上の注意点を確認することが推奨されます。

Vercel Web Analytics

Vercelは、ウェブサイトのパフォーマンスとユーザー行動を把握するための分析ツール「Vercel Web Analytics」を提供しています。この機能は、プライバシーに配慮した設計となっており、Cookieを使用せずに主要な指標(ページビュー、訪問者数、参照元、パフォーマンススコアなど)を収集します。

開発者は、Vercelのダッシュボードから直接これらのデータにアクセスし、サイトの改善に役立てることができます。特に、Core Web Vitalsなどのパフォーマンス指標を簡単に追跡できる点は、ユーザー体験の向上を目指す上で重要です。

Next.js以外のモダンなフレームワークのサポート

VercelはNext.jsとの親和性が非常に高いことで知られていますが、それ以外のモダンなフロントエンドフレームワークや静的サイトジェネレーターも幅広くサポートしています。

例えば、React (Create React App)、Vue.js、Nuxt.js、Angular、Svelte、Gatsby、Hugoなど、多くの人気フレームワークに対して、ビルドコマンドや公開ディレクトリなどを自動で検出し適切に設定するフレームワークプリセットが提供されています。これにより、開発者は複雑な設定を行うことなく、スムーズにデプロイプロセスを開始できます。

これにより、開発者は好みの技術スタックを選択しつつ、Vercelの強力なプラットフォームの恩恵を受けることができます。

料金プランの比較

Vercelは、個人の趣味プロジェクトから大規模なエンタープライズアプリケーションまで、さまざまなニーズに対応するための料金プランを用意しています。

※本記事に記載されているVercelのサービス内容、機能、料金プランに関する情報は記事執筆時点のものです。
Vercelは継続的にサービスをアップデートしているため、最新かつ正確な情報については、必ずVercel公式サイト(vercel.com)をご確認ください。

Hobby

Hobbyプランは、個人開発者や非商用プロジェクト向けの無料プランです。

このプランでは、Vercelの基本的な機能(自動デプロイ、グローバルCDN、プレビューデプロイなど)を利用できますが、商用利用は許可されていません。帯域幅やサーバーレス関数の実行時間などに一定の制限がありますが、小規模なプロジェクトや学習目的であれば十分に活用できます。

Pro

Proプランは、商用プロジェクトやチームでの利用を想定した有料プランです。

Hobbyプランの機能に加えて、より多くの帯域幅、ビルド数の増加、複数メンバーでの共同作業機能、パスワード保護されたプレビューデプロイ、より長時間のサーバーレス関数実行時間などが提供されます。スケーラビリティとパフォーマンスが求められるプロダクション環境での利用に適しています。料金は、利用量やチームの規模に応じて変動する場合があります。

Enterprise

Enterpriseプランは、大規模な組織やミッションクリティカルなアプリケーション向けの最上位プランです。

Proプランの全機能に加え、専任のカスタマーサクセスマネージャーによるサポート、SLA(サービス品質保証)、高度なセキュリティ機能、カスタム契約、ボリュームディスカウントなどが提供されます。企業の特定の要件に合わせてカスタマイズされたソリューションが必要な場合に選択されます。詳細な料金や機能については、Vercelへの直接の問い合わせが必要です。

Vercel ホスティングのはじめ方

Vercelを利用したホスティングは非常に直感的かつ迅速に行うことができます。ここでは、アカウントの作成から最初のデプロイまでの基本的な手順を説明します。

アカウント作成とGitリポジトリの連携

Vercelを利用するためには、まずアカウントを作成する必要があります。公式サイト(vercel.com)にアクセスし、GitHub、GitLab、Bitbucketのアカウント、またはメールアドレスを使用してサインアップします。
既存のGitプロバイダーのアカウントでサインアップすると、リポジトリへのアクセス許可を求めるプロンプトが表示され、連携がスムーズに行えます。

アカウント作成後、Vercelのダッシュボードにログインします。新しいプロジェクトを作成する際には、連携したGitプロバイダーからデプロイしたいリポジトリを選択します。
Vercelは選択されたリポジトリのフレームワークを自動的に検出しようと試みますが、必要に応じて手動で設定することも可能です。

デプロイ手順

リポジトリを選択し、プロジェクトの基本設定が完了すると、デプロイプロセスが開始されます。
Vercelは、プロジェクトのルートディレクトリやビルドコマンド、出力ディレクトリなどを自動的に検出しようとしますが、これらの設定は必要に応じてカスタマイズできます。

環境変数の設定

アプリケーションがAPIキーやデータベースの認証情報などの機密情報を必要とする場合、環境変数を使用してこれらを安全に管理することが重要です。

Vercelでは、プロジェクト設定画面から環境変数を登録できます。登録された環境変数は、ビルド時およびランタイム(サーバーレス関数など)にアプリケーションからアクセス可能になります。環境変数は、本番環境、プレビュー環境、開発環境それぞれに異なる値を設定することもできます。

デプロイメント設定の確認

デプロイを実行する前に、ビルド設定やルートディレクトリ、Node.jsのバージョンなど、各種デプロイメント設定を確認します。Next.jsのような主要なフレームワークを使用している場合、多くはデフォルト設定のままで問題ありませんが、プロジェクト特有の要件がある場合は適宜調整が必要です。

例えば、特定のビルドコマンドを実行する必要がある場合や、静的ファイルが出力されるディレクトリが標準と異なる場合などが該当します。

デプロイ完了と公開URLの確認

設定を確認し、「Deploy」ボタンをクリックすると、Vercelがリポジトリからソースコードを取得し、ビルドプロセスを開始します。ビルドが完了すると、自動的にデプロイが行われ、グローバルCDNを通じてアプリケーションが公開されます。デプロイが成功すると、Vercelのダッシュボード上に公開URLが表示されます。

このURLにアクセスすることで、デプロイされたアプリケーションを確認できます。また、mainブランチ(または指定した本番ブランチ)へのデプロイは、自動的に本番環境のドメインに反映されます。

より深く活用する

Vercelの基本的なデプロイ機能を理解した上で、さらに高度な機能を活用することで、開発ワークフローの効率化やアプリケーションのパフォーマンス向上を図ることができます。

カスタムドメインの設定方法

Vercelでデプロイされたプロジェクトには、デフォルトで vercel.app のサブドメインが割り当てられますが、独自のカスタムドメインを設定することも可能です。

プロジェクトのダッシュボードから「Domains」セクションに移動し、使用したいドメイン名を追加します。
その後、Vercelから提供されるDNSレコード(通常はAレコードやCNAMEレコード)を、ドメインを管理しているDNSプロバイダー(例: Google Domains, Cloudflare, Namecheapなど)の設定画面に追加します。

DNSレコードが正しく伝播されると、カスタムドメインでアプリケーションにアクセスできるようになります。Vercelは、カスタムドメインに対して自動的にSSL/TLS証明書を発行し、HTTPS通信を有効にします。

プレビューデプロイメントの設定方法

前述の通り、VercelはGitブランチごとにプレビューデプロイメントを自動生成しますが、この挙動をより細かく制御することも可能です。

例えば、特定のブランチパターン(例: feature/*)のみプレビューデプロイを作成するように設定したり、プレビューデプロイメントにパスワード保護を設定して、関係者以外からのアクセスを制限したりすることができます。

また、Vercel CLIやAPIを利用することで、より複雑なプレビューデプロイメントのワークフローを構築することも可能です。これらの設定は、プロジェクトのSettingsタブ内にある「Git」や「Security」のセクションから行うことができます。

サーバーレス関数の利用方法

Vercelのサーバーレス関数は、バックエンドロジックを簡単に実装できる強力な機能です。Next.jsを使用している場合、プロジェクトの pages/api ディレクトリ内にJavaScriptまたはTypeScriptファイルを作成するだけで、そのファイルがAPIエンドポイントとして機能するサーバーレス関数としてデプロイされます。

例えば、pages/api/hello.js というファイルを作成し、以下のようなコードを記述すると、/api/hello というエンドポイントが作成されます。

// pages/api/hello.js
export default function handler(req, res) {
res.status(200).json({ message: 'Hello, World!' });
}

リクエストオブジェクト (req) には、HTTPリクエストに関する情報(メソッド、ヘッダー、クエリパラメータ、ボディなど)が含まれており、レスポンスオブジェクト (res) を使用してクライアントに応答を返します。

サーバーレスファンクション内では、データベースへのアクセス、外部APIの呼び出し、認証処理など、さまざまなバックエンド処理を実行できます。Vercelは、これらのファンクションの実行環境を自動的に管理し、必要に応じてスケーリングします。

他のホスティングサービス比較

Vercelは優れたホスティングプラットフォームですが、他にも有力な選択肢が存在します。ここでは、主要な競合サービスとの違いを明確にし、Vercelがどのような場合に最適かを考察します。

Netlifyとの違い

Netlifyは、Vercelと並んでJamstackホスティングの分野で非常に人気のあるプラットフォームです。

両者は多くの共通点(Gitベースのデプロイ、グローバルCDN、サーバーレス関数など)を持ちますが、いくつかの違いも存在します。Netlifyは、フォーム処理、認証、スプリットテストといった組み込み機能が充実しており、オールインワンのソリューションとしての側面が強いです。

一方、VercelはNext.jsとの深い統合を強みとし、フロントエンド開発者の体験とパフォーマンス最適化に特に注力しています。サーバーレス関数の実行環境やエッジコンピューティング機能においても、Vercelは独自の進化を遂げています。どちらを選択するかは、プロジェクトの要件や重視する機能によって異なります。

AWS Amplifyとの違い

AWS Amplifyは、Amazon Web Servicesが提供するモバイルおよびウェブアプリケーション開発プラットフォームです。フロントエンドのホスティングだけでなく、認証、API (GraphQL/REST)、データストア、ストレージなど、包括的なバックエンドサービスを簡単に構築・連携できる点が特徴です。

AWSの強力なインフラとエコシステムを活用できる一方で、Vercelと比較すると設定の自由度が高い分、学習コストや管理の複雑さが増す可能性があります。Vercelはよりフロントエンド開発に特化し、シンプルな操作性と開発体験の向上を追求しているのに対し、Amplifyはフルスタックのアプリケーション開発をAWS上で完結させたい場合に適しています。

Vercelのサーバーレス関数はAPIエンドポイントの作成やデータ連携といった多くのバックエンド処理に対応可能ですが、例えば、複雑なデータベースの管理・運用や、常時稼働する専用サーバー、高度なインフラストラクチャレベルでのカスタマイズが求められるような大規模バックエンドシステムにおいては、AWS Amplifyが提供するような包括的なバックエンドサービスや、AWSの他の専門サービス群を組み合わせる方が適しているケースもあります。

Cloudflareとの違い

Cloudflareは、元々CDNおよびセキュリティサービスの大手プロバイダーですが、近年「Cloudflare Pages」という静的サイトホスティングサービスや、「Cloudflare Workers」というエッジコンピューティングプラットフォームを提供し、Vercelの競合として注目されています。

Cloudflare Pagesは、Vercelと同様にGit連携による自動デプロイや高速なグローバルネットワークを特徴としています。Cloudflareの強みは、その広範なネットワークインフラと、Workersによる高度なエッジコンピューティング機能にあります。

Vercelは開発者体験やNext.jsとの統合に優位性がある一方、Cloudflareはネットワークパフォーマンスやセキュリティ、そして柔軟なエッジロジックの実装において強力な選択肢となります。

Vercelが最適なケースとは

Vercelが特にその強みを発揮するのは、以下のようなケースです。

  • Next.jsを主要フレームワークとして使用するプロジェクト
    Next.jsの機能を最大限に活かし、最高のパフォーマンスと開発体験を求める場合に最適です。
  • フロントエンド中心の開発チーム
    インフラの管理よりもアプリケーション開発に集中したいフロントエンド開発者やチームにとって、Vercelのシンプルな操作性と自動化機能は大きなメリットとなります。
  • 高速なイテレーションとプレビューが求められるプロジェクト
    ブランチごとのプレビューデプロイ機能により、迅速なフィードバックループを実現し、品質の高い製品を効率的に開発できます。
  • グローバルなユーザーに高速な体験を提供したい場合
    VercelのグローバルCDNとエッジネットワークにより、世界中のどこからでも快適なアクセス速度を提供できます。
  • サーバーレスアーキテクチャを指向するプロジェクト
    APIルートやサーバーレス関数を簡単に導入し、スケーラブルなバックエンドを構築したい場合に適しています。

もちろん、上記のケース以外でもVercelは有効な選択肢となり得ますが、特にこれらの要件が強いプロジェクトにおいては、Vercelの採用が大きなアドバンテージとなるでしょう。

まとめ

Vercelは、現代のフロントエンド開発におけるデプロイとホスティングの課題を解決するために設計された、非常に強力で使いやすいプラットフォームです。

Next.jsとの卓越した親和性、CI/CDによるシームレスな自動デプロイ、グローバルCDNによる優れたパフォーマンス、そして開発ワークフローを加速するプレビューデプロイやサーバーレス関数といった機能群は、開発者体験を大幅に向上させ、高品質なウェブアプリケーションの迅速な提供を可能にします。

ホスティングの開始は極めて簡単で、Gitリポジトリを連携させるだけで基本的なデプロイが完了します。さらに、カスタムドメインの設定やサーバーレス関数の活用といった高度な機能も直感的に利用できるよう工夫されています。

Netlify、AWS Amplify、Cloudflareといった他のホスティングサービスと比較しても、Vercelは特にNext.jsエコシステムとの連携やフロントエンド開発者の生産性向上という点で独自の強みを持っています。プロジェクトの特性やチームのニーズに応じて最適なプラットフォームを選択することが重要ですが、高速でスケーラブル、かつ開発者フレンドリーなホスティングソリューションを求めるのであれば、Vercelは間違いなく検討すべき最有力候補の一つと言えるでしょう。

フェンリル株式会社

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